エレベータ技術のおもしろ話 第四話:エレベーター種類はこんなにあるの?(日本元気シニア総研 執行役 榎本惠一)

1408ele4 第一話から第三話までEVの歴史・構造・省エネ・安全性を中心にお話ししました。今回は主にEVの種類について紹介しましょう。

1. EVは採算に見合うの?

世界最高速EVの歴史は、ニューヨークのエンパイアーステートビル(毎分360m・1971年)、テロで崩壊した世界貿易センタービル(毎分480m・1972年)、シカゴシアーズタワー(毎分540m・1973年)でした。横浜ランドマーク(毎分750m・1993年)では展望台へ約30秒程で直行できました。ビルのオープン直後9ヶ月間で展望台直行した利用者は2百万人の記録から計算すると、料金は千円だったのでわずか9ヶ月間に20億円を売上げたことになり、採算性は充分です。

2. EVの種類はいろいろ

(1)「一般的EV」:人間運送用のカゴ室と荷物運送用のカゴ室用の2つに大別されます。前者は乗員を含む最大積載量に合わせ設計され、後者は重い荷物の最大積載量に見合う設計となっています。 近年の超高速EVカゴ室の内部は四角ですが、カゴ室全体の形状は玉子型になっていて、上下走行時の空気抵抗をできるだけ和らげる設計配慮が多いのです。 (2)「ダブルデッキEV」:カゴ室が2階建てEVで、下のカゴ室が1階で停止している時、上のカゴ室はちょうど2階に停止する設計のEV。しかし、ビルの階高はすべて同一でないと機能できない。カゴ室が二つであっても、輸送能力は通常の1.3倍程度なので、ごく一部のビルでしか採用されていません。 (3)「リニアモーターEV」:リニアモーター駆動式の高速列車が試験的運転段階となり、いつ頃から実用化するのか話題となっています。EV世界ではこの原理に近い方式で稼働するEVがすでに実用化段階にあります。しかし、コスト面でかなり割高になるため、あまり普及はしていません。 (4)「高所保守用EV」:火力発電所の高い集合煙突などに保守用EVが稼働しています。本四架橋のような大型の橋脚で、「くの字」に曲がったものでもEVの特殊技術を駆使して実際に稼働しています。 (5)「機械室無しEV」:ロープ式のEVはビルの屋上に「EV用機械室」があるのが通常。近年は機械室内の機器をEV機内部に収め「機械室無しEV」が開発され、機械室の建築費節約とビルの有効面積が増すので、このタイプのEVが主流の方向になっています。 (6)「ホームEV」:1987年メーカーで開発され、高齢化社会時代と相まり老人と身障者を家の中で移動させる目的で年々家庭向け設置が普及しました。 ただし、このEVは建築基準法で次の設置規定が定められています。 a. 個人住宅専用、b. 利用者は家族に限定、c. カゴ床面積は1.1㎡以下、 d. 走行距離は10m以下、e. カゴの積載荷重は3人乗りの範囲。 (7)「モジュラー・エスカレータ(マルチ駆動方式)」:多数の客車を牽引するには重くて大きな機関車が必要。電車のように複数の駆動機を分散して配置してあれば大型機関車の必要はなくなります。長いエスカレータを1台の原動機で動かそうとすると、動力の強大な原動機や動力伝達部品の大型化が必要になります。この解決には「マルチ駆動式」のエスカレータが必要となります。原理的には無限の長さまで対応できるシステムが可能となるはずです。

3. 未来の昇降機

「記録とは破られるためにある」と言われます。横浜ランドマークEVは世界最高速とギネスブックに掲載されましたが、その後毎分1000m新製品にその座を渡し、2年後の2016年は毎分1200m超高速EVへその座を譲る状況に来ています。世界遺産登録で有名になった富士山の頂上まで、原理的に可能な「マルチ駆動式エスカレータ」が設置される時代の到来を夢みても決して不思議ではない気がします。 これまで4回にわたり、エレベーターの歴史から新型EVについてお話ししてきました。皆さんがこれからEVに乗られる毎に、今まで以上に関心を寄せるお役にたてば誠に幸いです。(完)

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