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教育資金贈与の非課税措置に思う(日本元気シニア総研 代表 富田眞司)

(初出 2013年4月 「元気シニア時代への提言」より)

4月から教育資金贈与の非課税措置が実施される

この4月からシニアに関して、気になる法律が改正されました。その一つが教育資金贈与の非課税措です。内容は、祖父母または父母が、孫(あるいは子)の教育資金を一括して信託銀行など金融機関の口座に入金した場合、1人当たり1500万円までの贈与分にかかる贈与税が非課税になるというものです。ただし、習い事など学校以外の支出は500万円が上限になります。2013年4月から2015年12月末までの贈与が対象で、孫が30歳時点で残った差額には贈与税がかかります。

金融庁は制度利用者を年に93万人と見込んでいるようです。マスコミの取りあげ方が「うまい」こともあり、シニアの関心が集まっています。

1. シニアの関心高く、45%が贈与の意向があるという

電通調査が行った意識調査では、同制度に対する祖父母の認知度は86%と10人に9人近くが知っているという、高い結果となりました。(調査対象:小学生以下の孫がいる50歳以上の祖父母2000名)

また、同制度を「よいと思う」と回答したのは52%で、祖父に限ると6割近くが肯定的な評価を示ししています。さらに、祖父母の45%は贈与の意向があるという高い結果がでました。一方、同調査によると、贈与希望額は約482万円で、祖父の平均年収とほぼ同じ規模になっています。

贈与意向のある祖父母がサポートしたいと考える教育費は、「大学」が51%と最も多く、「高校」が32%、「スポーツ・芸術などの特殊な教育」が18%でした。

2. 教育にかかる費用は、大学入学前までが500万円

幼稚園から高校まで、すべて公立に通うとすると、504万円かかるというデータがあります。(文部科学省「子ども学習調査2010年」より)祖父母の贈与希望額、485万円とほぼ一致します。大学前までの費用までは、何とか祖父母が負担したという考えのようですね。

年金や退職金などで、祖父母の懐が豊かなことにくらべ、今の現役世代の収入が厳しく、教育にかかる費用位は何とか、してやりたいという、シニア世代の思いのようです。

3. 金融機関がビジネスチャンスになると乗り出した

この税制改革を受け、金融機関が新しいサービスを始めています。 各行が始めるのは、祖父母から孫への教育資金を預かって運用する「教育資金贈与信託」です。引き出す際には、学校の入学金や授業料、塾や習いごとの月謝など教育目的で使うという証明が必要になります。具体的には、祖父母が孫名義で口座を開設します。

例えば、りそな銀行や三井住友信託銀行は5000円から、三菱UFJ信託銀行は10万円から口座を開設できます。1500万円までは随時、贈与額を追加できます。各行とも元本保証で運用し、引き出し回数に制限はありません。ただし、孫が30歳になった時点での使い残りには贈与税がかかることになります。この制度はひ孫や子どもでも適用できます。

今回の税制改正では、2015年末までは、祖父母から孫などへの教育資金の贈与は1人につき1500万円まで非課税で人数制限はなく、孫が3人いれば計4500万円まで非課税になります。

各行は、契約手数料を無料にするなどして、利用者の獲得を目指しています。三菱UFJ信託銀行やみずほ信託銀行は、グループのメガバンクや証券会社と連携し、申し込みなどでの使い勝手を高めています。三井住友信託銀行はサービスの利用者の定期預金金利や住宅ローン金利を優遇するほか、りそな銀行は祖父母から孫へのメッセージカードを用意しています。孫への資金譲渡とあって、相続対策の裾野が富裕層以外にも広がると業界の期待は大きいようです。

4. 相続税強化で課税対象となるのは、たった6%

ところで、今回の話題のもとにあるのが、相続税の強化があります。どんな内容かご存じですか。2013年度税制改正で、教育資金贈与税の減税の一方で、相続税が強化されました。平成25年度税制改正大綱が発表されました。また、改正の施行時期はほとんどのものが平成27年1月1日以後に開始する相続からになります。

相続税の主な改正内容(改正時期は各項目により異なります)
【基礎控除額の改正】(平成27年1月1日~)
現行   5,000万円+1,000万円×法定相続人の数
改正後  3,000万円+600万円×法定相続人の数

上記改正により、相続税がかかる範囲が拡大されることになります。例えば相続人1人の場合、現行では6,000万円の基礎控除がありましたが、改正後は3,600万円に減額されます。この税制改革によって、課税対象となる相続税は現在の4%から6%に拡大すると見られています。

考えてみれば、相続税が強化されたとしても対象となるのは僅か6%です。100名の相続に対し、僅か6名で、殆どの方は対象外となります。

それなのに、生前贈与がシニアに高い関心があると言うのは不思議な現象です。マスコミの話題づくりがうまいことによるかもしれません。そのため、シニアが実態に気付くと、効果もあまり期待できないかもしれませんね。

筆者は72歳ですが、僅かな保有資産しかなく、これから生きていくため、老後の介護のことを考えると、保有資産を大切にし、子供に迷惑をかけないようにと考えています。とても、孫への贈与という発想は出てきません・・・。

5. シニアの世代間ギャップがある

70代前半ということもあり、筆者は相続を「自分ごと」として考えられません。もっと若い人もそうかもしれません。80代を過ぎると、考え方も違ってくるのではと、考えたりします。

では、電通の調査対象は50歳以上ですが、関心度が高い結果となっています。恐らく、調査対象がもっと若い人が多いからだと考えられます。本来の対象ではなく、比較的若いシニアで情報に関心度が高いシニアが多いためとも考えられます。超高齢者は調査に回答する機会がないため、実際に相続を前にした人達の実感とは違うようにも思います。

6. 元気シニア時代への提言

シニアが保有する資産を有効活用することは経済活性化に役立つ

日本人の資産保有が1500兆円といわれ、その6割を60歳代以上が保有しているといわれています。また、年代別の世帯別貯蓄額を見ると、50代が1544万円に対して、60代が2130万円、70代以上が2076万円と60代以上に高くなっています。しかも、60代以上は負債が少なく、殆どが資産となっています。(平成21年全国消費実態調査 二人以上の世帯の家計収支及び貯蓄・負債に関する結果)

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現状を考えると、日本経済の活性化のためには、シニアが保有し、眠っている資産を有効に活用することが重要な戦略となります。

確かに、相続税強化はその一つですが、シニアの死後の税金を強化する間接的な手法でなく直接的な刺激策が期待されます。今、増加するシニア市場獲得に積極的に乗り出す企業も増えています。

シニア向け「社会貢献ポイント」制度の提案

シニアが元気になる施策で資産活用できれば、増加する要介護者対策、医療費削減対策にも繋がります。元気シニア活性化のための「シニア向け社会貢献ポイント」のような「エコポイント制度」に似た独自政策に期待します。

例えば、シニアが「社会に貢献できる出費」「認知症予防など医療費削減に役立つ出費」「知的創造を高める出費」などをした際に、独自のポイント制を設け、特典を与えるものです。

具体例としては、「孫への教育資金提供」「健康診断への参加」「健康に関する勉強会への参加」「社会貢献への参加」「知的創造勉強会への参加」などです。対象となる制度に参加した場合に、ポイントを付与します。そのポイントがたまると、プレゼントを進呈するものです。

この制度の主体となるのは行政がいいですね。シニアに期待や楽しみ、生きがいをもっていただくことができます。

相続税強化のような間接的な発想ではなく、もっとシニアの直接働きかける発想、シニアが喜んで参加できる楽しい発想でシニアが元気になるような発想の施策があると嬉しいと思います。

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