退職シニアが地域で交流できないのは上から目線が原因。その対応策とは(日本元気シニア総研 代表 富田眞司)

(初出 2013年5月 「元気シニア時代への提言」シリーズより)

団塊シニアリタイアの課題の一つは地域や若者との交流

700万人もの団塊シニアが順次リタイアし、シニア人口はますます増加します。そのため、団塊シニアがどのように地域に溶け込むかが大きな課題になります。その課題の一つに、地域の人や若ものと、いかに交流するかがあります。それを阻害するのが、リタイアシニアの「上から目線」があります。

シニア本人は、全く気がつかない何気ない言葉の中に、「上から目線」が発せられていることがあるからです。気をつけないといけませんね。

上から目線での失敗談が多数!

●町内会デビューに失敗した事例!

例えば、会社を退職し、地域の交流の場に参加したシニアの失敗談があります。町内会での会合で実際にあった話です。

町内会でAさんは用意されたお茶がなくなったので、つい隣に着席していた奥さんに、「お茶」と言ってしまったのです。Aさんが会社に在職中でしたら、秘書がすぐにお茶のお代わりを出してくれました。

そんな企業生活が身についているAさんは普通の言動としての「お茶」と叫んだのです。一方、隣に着席した奥さんは、男性の命令口調での「お茶」に大いに憤慨しました。何で私が命令されなければならないのかと。

このことがあってから、Aさんは、2度と町内会には顔を見せなくなったといいます。

●ツアー参加での失敗事例!

次に旅行中でのBさんの発言での失敗があります。最近、「一人旅ツアー」が人気です。そんな一人旅ツアーに参加したBさんが「自己紹介会話」への発言での失敗談です。

一人旅ツアーへは色々な目的で参加されています。リタイアシニアBさんは「昔をしのぶ」目的で参加されていました。そんな中で、ある男性が参加目的に「女性とのめぐりあい」もあるではないかと話したところ、Bさんが思わず大声で「そんな目的はダメだ」とその参加目的を批判してしまいました。

自己紹介をしたその男性は、その批判にびっくり、返す言葉もありませんでした。しかも、その一言で楽しい旅行の雰囲気が壊れてしましました。

その後、批判したBさんはツアーの参加者から声をかけられなくなり、孤立してしまいました。

Bさんは、80代の方で戦争体験された真面目な方です。自分の価値観から、旅行でのナンパは許されないと思い、自分目線、上から目線で、つい口走ってしまったのでしょう。

このような出来事は、リタイアシニアが知らないところで頻発しているような気がします。

Aさんも、Bさんも悪気があったわけではありません。Aさんは、秘書がいるビジネスパーソン時代と同じ行動とったための失敗です。Bさんは、自分の考え方を押しつけたための失敗です。長いビジネスパーソン時代に見についた上から目線で発言してしまったことが原因となっています。

上から目線とは、どんな内容を指すのか

ビジネスパーソン時代、管理職者や役員・社長などの役職者としてビジネスを支えてきた人達にとっては、部下に業績向上指導やビジネスノウハウを指導などすることが身についています。

勤務していた会社では必要なことでしたが、リタイアすれば全く対等な立場になるため、上から目線はゆるされません。相手の立場を尊重しなければなりません。

では、どんなことが上から目線になるのでしょうか。

1. 指導する

長い間、部下を指導する立場にあると、つい指導してしまいます。

2. 評価する

管理者は部下の評価が重要な仕事になります。そのため、何かにつけ、評価する習慣がついています。

3. 批判する

人生経験が豊富なシニアは若者の軽はずみな行動や、自分の価値観にあわないとつい批判してしまいます。

4. 口を出す

気になる他人の行動をみるとつい口を出したくなります。「おせっかいやき」なところもあります。

5. 決めつける

長く生きてきたこともあり、自分に自信ができると、自分の意見が正しいと決めつけ、他人に押し付けたりします。

6. 命令する

会社で社長、取締役、部長など上役だった人ほど、ビジネスパーソン時代には、部下に命令する機会が沢山あります。その影響もあり、命令口調になることがあります。

7. 成功話をする

人生苦労して事業を成功させたシニアは、つい成功話をしたくなります。不況で成熟期の今、仕事がうまくいかない人が多い時に、シニアの成功話は聴きたくない人も多いでしょう。

上から目線をやめないと、主婦や若者とは会話ができない

昔と違って年配者を尊敬する主婦や若者は少なくなっています。主婦は主人の仕事や地位に関係なく、水平な立場でご近所の人と付き合っています。

また、今の若者も同様に、自由な立場で付き合っています。まして、「さとり世代」と言われる、20代-30代前半の若者は、成功体験もなく、お金やものの所有にこだわらず、成功話にはあまり興味を示しません。

そんな地域の主婦や若者に上から目線で話をすれば、仲間に入ることができないどころか、はじき出されることになります。

そうならないためには、リタイアシニアは、地域の人達と話ができるようになるために「意識改革」が必要になります。

元気シニア時代への提言 -「聴く」「認める・謝る」「褒める」「共感する」ことができるシニアになろう-

では、どんな「意識改革」が必要でしょうか。四つのことを提案します。

1. 聴く

まずは、相手の話を聞くことです。どんな意見をもっているか、何を考えているかをしっかりと聴くことです。情報化社会で生きてきた若者や主婦は、びっくりするほどの知識をもっていることに気が付きます。

2. 認める・謝る

話を聴くことで、相手の考え方がわかってきます。そこで大切なことは、相手を認めることです。世の中にはいろいろな意見があって良いのです。世代間の違い、育った環境の違いなどで考え方は大きく違います。相手を認めることで、自分の立場も理解される可能性が高まります。

また、素直にあやまれない退職シニアがいます。ビジネスパーソン時代に、自分の立場を守るために、「言い訳」や「弁解がうまい」で世渡りしてきたシニアもよく見かけます。自分が間違っていたら素直に謝る気持ちも相手を認めることと同様に大切なことです。

3. 褒める

さらに、相手の意見や考え方を褒めることができれば、相互信頼できるようになります。上から目線では、注意することやしかることはできても、とても褒めることはできません。しかり、褒めることができるようになれば、相手からも信頼されます。

4. 共感する

最後は「共感する」ことです。SNSで例えるなら「いいね!」ボタンを押す気持ちになることです。同じ目線で考えると、共感しやすくなります。

これらのことがすんなりできれば、上から目線がなくなり、若者や主婦と同じ目線で生活することができるようになると思います。

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