退職後に収入を得る、六つのジャンル(代表 富田眞司)

(初出 2013年11月 「元気シニア時代への提言」シリーズより)

1. 定年延長しても、生活に不安が残るシニアが増えている

アベノミクスで景気回復が叫ばれていますが、その恩恵を受けるのは、大手企業など、限られた企業です。それどころか、長引くデフレでビジネスパーソンの実収入が減少し続けています。

定年前のシニアは年金支給年齢の延長に伴い、定年延長されるものの、延長された年に支払われる給与はそれまで支給された給与から比べれば、かなり低いのが現状です。

それでも何とか、65歳まで働くことができる人は生活費の足しにすることができるだけでなく、働くことが生きがいにも繋がり、幸せと言えるかもしれません。

もちろん、定年後、資産が十分ある人や、国民年金、厚生年金、そして、企業年金までもらえる人は、定年後の生活費の心配はなく、生活のために働く必要はありませんね。

しかし、国民年金など年金受給金額が少ない人は、定年後の生活費が問題となります。もし、定年後も何とか収入が得られれば、年金不足を補うことができ、不安解消にもつながります。

高齢無職世帯は月に5万8千円の赤字という結果

平成22年度のデータによれば、世帯主が60歳以上の2人以上の無職世帯(高齢無職世帯)の実収入は1世帯当たり1カ月平均21万8千円。実収入から税金や社会保険料などを差し引いた可処分所得は18万7千円です。一方で、消費支出は24万6千円で、5万8千円の赤字になっています。

この数値はあくまでも統計上の平均値での比較なので、そのままの家庭があるわけではありませんが、あと5万8千円あれば、定年後のシニアの赤字がなくなるといえます。そのためには、定年後の収入確保への期待も大きくなっています。

しかし、高齢者が定年後に収入を得たいと思っても、簡単に仕事が見つかるというものではありません。

2. 定年後に仕事をして、収入を得る方法のご提案

そこで、定年後も仕事をして、収入を得るため、どうすれば良いかのご提案をしましょう。大きく分けて、六つの方法があります。

(1)専門能力を生かして収入を得る
(2)人脈を生かして収入を得る
(3)新たなジャンルに挑戦して収入を得る
(4)社会貢献活動で収入を得る
(5)趣味・スポーツなどの能力を生かして収入を得る
(6)パートなど、勤務して収入を得る

では、具体的にどんな内容か触れてみましょう。

(1)専門能力を生かして収入を得る

ビジネスパーソン時代に培った専門能力を生かして、収入を得るものです。例えば、インターネット関連の能力がある方なら、専門能力生かしたり、通販、ドロップシッピング、アフィリエイト、ブログライターなどでの収入を得ることができます。

定年後も生かせる専門能力としては、企画、経理、人事・教育、海外事業、資産運用、マーケティング、個人情報保護、経営診断などの専門能力があれば、それを活用することで収入を得ることができます。

収入を得る方法としては、出版・執筆、講演、研修、顧問、請負業などがあります。もちろん、あこがれの大学教授になり、収入するという方法もあります。

今、企業は不況などに対応するため、内部から外部に仕事を出す傾向がありますので、専門能力があれば、企業の外注先やアウトソーシング先としてのビズネスチャンスがあります。例えば、4月の新人教育などは、社内では行わず、外注するケースも増えています。

ビジネスの獲得方法は、自ら営業活動を展開する方法もありますが、インターネットで講師派遣などの登録サイトや専門家を集めたクラウドソーシングサイトに登録する方法があります。

また、商工会議所、カルチャースクール、大学のエクステンションカレッジ、研修センターなどに働きかけ、そこで講師をする方法などもあります。

専門能力を生かしてビジネスを続ける際の課題としては、時代が大きく激変しているため、リタイア後も専門能力が通用できるかです。その課題が解決できるように、常の専門分野の能力向上に注力することが大切になります。

(2)人脈を生かして収入を得る

ビジネスパーソン時代に知り合った人脈を活用してビジネスを行うものです。営業活動や新規事業実施などで困っている企業に対して、自分のもっている人脈を活用し、取引先を紹介するという仕事です。

自分が勤務していた企業の人脈、企業が所属する業界、そして、仕入先、販売先など、リタイアした企業での人脈を活用するものです。この人脈を、企業を核とした「縦の人脈」と呼ぶことにしましょう。

これに対して、自分がもっている専門分野という「横の人脈」があります。専門分野とは、先にも触れましたが、例えば、マーケティング、財務、教育、海外、Webなどの専門業務での人脈です。

企業で働いている時は自分では中々気づかないのですが、長いビジネスパーソン時代に得た人脈は大きな財産になります。今、ものが売れない時代なので、その人脈を活用した営業活動は大いに役に立ちます。もし、企業の営業顧問になれれば、それなりの収入が得られるでしょう。

また、自分がもっている人脈を生かし、プロジェクトのプロデューサーになるビジネスもあります。

前述の「専門能力」を活用する方法は技術が日進月歩する時代では限界がありますが、人脈ビジネスは「人間関係」が財産になりますので、ビジネスチャンスとしては大きいといえます。そのため、日ごろから、人間関係を良くしておくことが重要になります。

(3)新たなジャンルに挑戦して収入を得る

ビジネスパーソン時代とは全く違うジャンルのビジネスに挑戦するものです。

例えば、資格を取得し、その資格でビジネスチャンスを得る方法や、新しい市場を見つけ、自分の力でビジネスチャンスを作るなどの方法があります。

資格取得でのビジネスチャンスに関しては、多くの企業が資格取得ビジネスを実施しています。資格取得すれば、ビジネスがすぐできるようなうたい文句で資格を取得したものの、そうではないものが多いので、気をつけましょう。たとえ、資格取得に高い月謝を払っても、その資格で生活ができるものではないことを理解する必要があります。

新しいビジネスとしては、「インターネットを活用するもの」、今後、「市場拡大が予想されるもの」、大きな市場の中で「小さくても、強いニーズがある市場」を狙う方法などがあります。

インターネット市場は新しいソフトは次から次へと新しい市場が開発されますので、新規ビジネスにはうってつけですが、失敗することも多い市場です。特に、シニアがインターネットで新規ビジネスをする際には、その方がインターネットに精通していないと失敗しかねません。

一方、今後拡大する市場としては、「シニア市場」「単身市場」「介護市場」「ペット市場」などや、「農業」「観光」など行政が注力しているものなどがあります。可能性が大きい市場といえます。

次に、大きな市場の中で、「小さくても強いニーズがある市場」は、例えば「運動会で早く走る靴」をコンセプトに開発した「瞬足」(アシックス)はご存じのように大ヒットしました。また、逆上がりができない子供が多いことに目をつけ、逆上がりだけを教える教室を開き成功したという話もあります。商品企画は大変なのでサービスビジネスならシニアでも可能性があります。旅行、教育、スポーツ、レジャー業界など、サービス市場にビジネスチャンスはありそうです。

今、シニアの起業に対しては、行政や団体から助成金が支給されるものもありますので、活用することをお勧めします。

(4)社会貢献活動で収入を得る

成熟社会での新規ビジネスチャンスは狭くなりますが、一方で社会貢献活動へのニーズはかなり高くなっています。子育て、介護、地域発展、農業・新規産業、地域起こし、シニア活性化支援など、多くの可能性があります。

ただし、社会貢献活動は、大きな収入の確保はできませんが、お客様に喜んでいただけることができ、自分も元気づけられます。

仕事を見つける方法としては、自分がお手伝いしたい業務を行っている「NPO」「一般社団法人」「財団法人」などを探し、そこに参加し働く場を設ける方法があります。

もちろん、仲間と一緒になって新しく「NPO」「一般社団法人」をつくる方法もあります。

(5)趣味・スポーツなどの能力を生かして収入を得る

好きなことをして収入が得られれば、そんな楽しいことはありません。それが、「趣味・スポーツ」などの能力を生かして収入を得る方法です。

音楽、絵画、花、料理、旅行、ダンスなど、シニアの方も多くの趣味をお持ちでしょう。その趣味で収入を得る方法です。

方法としては、「講師」「コンシェルジュ」「コンサルタント」「アドバイザー」「専門店開業」などの道があります。

「講師」は、カルチャースクール、大学のエクステンションカレッジ、企業が主宰している教室など、教育事業をされている場所で講師をする方法や自分で教室を開く方法があります。

「コンシェルジュ」「コンサルタント」「アドバイザー」などは、専門能力を武器に収入を得るものです。企業の商品企画、販促活動などを手伝う方法、自ら起業する方法があります。

自ら起業する方法の中には、今主婦が自宅を教室にして料理やフラワーアレンジメントなどを開催する「サロネーゼ」と呼ばれる教室が話題になっています。

趣味で収入を得るには、講師やコンシェルジュになれるだけの知識や人に教える能力が必要になりますが、好きなことをして収入を得られれば、そんな楽しいことはありません。

(6)パートなど、勤務して収入を得る

六つめは、パートなどで勤務して収入を得る方法です。多くの場合、専門能力を必要としませんが、ビジネスパーソンで働いた時代に比べ多くの収入が得られるものではありません。時給いくらの収入になります。

今、若者でも働く場が少ない時代ですので、シニアが働く場は少ないのが現状です。とくに、男性は少なく、比較的多くあるとしても、「マンション管理」「清掃」「警備」「自転車駐輪場整理」「ポスティング」などです。

一方、女性の場合は、比較的恵まれ、販売や接客サービスを始め、「介護」「ホテル清掃員」などがあります。

何か特技があるなら、民間で「シニア派遣」を実施している会社や団体に登録しそこから派遣される方法があります。行政が実施しているシルバー人材に登録する方法もあります。軽作業が多くなりますが、収入はかなり少なくなります。

この方法は他の方法に比べて、単なる時給労働になります。また、あまり収入が期待できません。

このように、定年後も働く道はあるものの、現役のビジネスパーソンとは収入や待遇に大きな違いがあることを理解していないと、就職しても、失敗しかねません。

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