転倒事故を防ぎ、ロコモ予防と健康寿命をのばす室内整備!(住環境・色彩担当 研究委員 上野邦子)
高齢者のけがの6割以上は室内で発生している
加齢による筋力の衰え、敏捷性や俊発力など運動機能の低下には個人差はありますが、さけては通れません。わずかな段差でもつまづいたり、滑って転倒するなど、高齢者のけがの6割以上が家(室内)で発生しています。転倒による骨折などで日常生活が不便になる(QOL クオリティ・オブ・ライフ ※1)の低下をまねき、さらに寝たきりになったり、要介護(ロコモティブシンドローム ※2)につながったりします。健康で元気で暮らす「健康寿命」を延ばすためには、身体機能に応じた安全対策、特に転倒予防への室内整備への配慮が大切になります。
※1 QOL ひとりひとりの人生の質や社会的にみた生活の質のこと。人間らしい生活や自分らしい生活を送り、人生に幸福を見出しているか
※2 ロコモティブシンドローム 通称ロコモ(運動器症候郡)骨、関節、筋肉等の機能が低下、立つ、座る、歩く等の動作が不安定になり転倒骨折、要介護の危険性が高まる
けがの原因の8割は転んだことによる
東京消防庁資料によると、高齢者がけがをした場所は住宅など61%、道路や駅など29%、その他10%になります。住み慣れた家の中で意外な結果のようですが、家(室内)には段差や滑りやすい床材などの危険が多くあり、家の中では油断しがちなことや何気ない動作がけがにつながる原因だと考えられます。また、東京消防庁の高齢者の緊急搬送の原因の8割は「転んだことによる」という結果が出ています。
転倒する原因を探ることが大切になる
(1)肉体的(内的)要因 加齢による骨量筋力、平衡感覚バランス機能、関節、視力の低下などによる転倒。
(2)家(部屋)要因 わずかな段差やカーペット、床に置いてあるものにつまづき転倒する。
照明がまぶしい、暗くてモノが見えなくなり、つまづき転倒する。
階段の昇り降り、浴室で転倒、スリッパなどで滑って転倒する。
室内整備と同時に習慣や体のバランス強化も大切
家のなかの問題点、日頃の行動や習慣をチェックして見ること。すぐに改善できることを行い、習慣を改める。同時に転倒予防の体のバランス強化も大切です。
・床にモノを置かないなど整理整頓片付けの習慣。少しの工夫で転倒防止になる。
・照明のまぶしさ、特に夜間照明、足元燈に配慮する。
・わずかな段差をなくす工夫と注意(カーペットなど)。床のすべりに注意をする。
・階段、浴室など必要なところに手すりをつける。
・家(室内)に問題があり改善が必要な場合(リフォーム)は専門家に相談する。