エレベータ技術のおもしろ話 第二話:エレベータの機能と省エネ稼働(日本元気シニア総研執行役 榎本惠一)

1408ev2 日本全国で稼働しているエレベータ(以下EV)の総数は約80万台と推定されています。日常私たちの身近で接していながらその素性は意外と知られていません。日本のEVは、基本機能のスピード・乗り心地・着床誤差は世界一の実力にあり、安全で経済的な縦の交通機関なのです。

1. EVが停電で止まったら?

EVに乗ってる最中に停電すると、EFVは急停車、照明が消え、換気扇は停止、非常灯が点灯します。自動着床装置付EVは、一旦停止後に上か下の最寄階まで移動してから停止してドアは自動オープンします。カゴ室に大勢乗っていると密室なので酸欠にならないか、ロープは切れないかなど次第に不安が募り、大抵の方は10分程で顔色が青ざめ気持ち悪くなのが普通。でも心配は全く無用です。なかなか気付きにくいのですが、カゴ室の上部と下部に必ず隙間があり、呼吸に必要な空気は循環しています。ロープ強度は吊っているカゴ室重量の10倍以上に耐えられる設計で安全。停電が復帰又は専門家が救出に来るまで乗客は安心して待っていれば良いのです。また、火災や地震発生時は、よほど古いEVを除き火災報知器や地震計の震度を自動で感知し、最寄り階のフロアへ自動停止し、扉を開く制御になっていて安心です。

2. EVの構造は『つるべ』式?

近年『つるべ』という言葉は死語になりつつありますが、昔の井戸は滑車の両側に桶が吊ってあり、交互に水を汲み上げる装置を『釣瓶(ツルベ)』と言っていました。EVの大部分はこの構造で、人が乗るカゴ室の反対側にオモリが吊ってあります。定員11名のEVを例にとると、カゴ室に5名乗ったときにカゴとオモリ重量が釣り合うよう設計されています。釣り合った状態では、駆動機は一番小さな力(パワー)でカゴを駆動できます。満員で上昇時もカゴ自体の重量(約1千Kg)に定員11名(約750Kg)の重量を加えて合計1750Kgとなり、オモリの重量は1350Kgなので、駆動機はその差のわずか400Kgの力で駆動できます。これは『つるべ式』のおかげで、著しく省エネルギーで稼働開始していることを意味しています。『つるべ』は昔から省エネを生む知恵だったのです。

3. EVはこんなにも省エネルギー?

2Kwのポンプを10時間運転するときの電力使用量は20KwHになります。2Kwのモーター使用するEVを10時間連続運転すると、EVは停止時間もあるので、実際の使用状況は多くて4~520KwH程度です。 なぜそうなるのでしょうか? カゴ室内が満員でEV上昇するときは2Kwモーターの最大電力を使用しますが(A)、満員でEVが下降するときのモーターは発電機として稼働し(B)、電力を消費しないで逆に発電しているからです。EVは次の公式で稼働するので、電力総使用量は当然少ない数値になる訳です。 EV電力総使用量 = EV上昇時電力量(A)- EV下降時電力量(B) 極論を言えばEVを上昇時には使用せずに下降時だけ使用すれば、電力総使用量はマイナスになります。具体例として、ビル10階の映画館が終演し、1階からカゴ室に乗る人は誰もいないで10階の観客を次々1階へ運んでいる時間帯だけを捕らえれば、EVは発電機の役割をしていることになります。

4. EVは安全な乗り物か?

(1)カゴ室を吊るワイヤーロープは重量の10倍以上の強度があり安全です。万が一、何らかの原因でロープが切れた場合はどうなるのでしょう? ロープが切れたらもちろんカゴ室は落下します。その落下速度がある限度を超えると『調速器』機能が作動し、カゴ室に取り付けてある非常止め装置でガイドレールをガッチリ掴まえ停止させる構造になっています。また、最下階の昇降路床に衝突はしないかの心配に対し、底床には『衝突受け緩衝器』が設置してあり、減速した後のわずかなショックで停止する設計が施されているので心配はご無用です。 (2)乗場の扉が開いた時は絶対に動かない制御、閉まる扉に身体や物が触れれば扉を再開する感知器が作動し、乗員過剰防止装置(ブザー・非稼働)など多くの自動制御機能が働くため、極めて安全な乗物として設計されているのです。

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