こんなはずじゃなかったシニアライフ 第3回「女の不満」夫が定年になって困ること

原沢修一です。「こんなはずじゃなかったシニアライフ」 その第3回目をお届けします。

第3回「女の不満」夫が定年になって困ること

ひたすらはげむ時間の消費

退職直後は各種手続きや申請などがあり結構忙しい。それがひととおり終わると待ちに待った自分の時間。朝食後舐めるように朝刊を読み、図書館に顔をだし、昼食後はゴルフの練習に出かけ、その後ジムに通い、汗をかいた後近くの温泉付きの大浴場で汗を流す。1週間に一度はカルチャーセンターにも通う。いかにも充実しているかのような1日を披露し「小生、目下晴耕雨読、至福のひと時を過ごしております」と近況報告を兼ねた挨拶状出した。(今思うと、ああ恥ずかしい!)

しかし、1か月も経たないうちに、同じことの繰り返しは飽きてくる。何よりも妻の無言の圧力や毎日遊んでいる私に対して近所の人の目が気になり始めてきた。何も悪いことをしているわけではない、当然の権利なのに、この違和感はいったいなんだ。それにもめげずひたすら有り余る時間の消費に励んでいた。

退職した夫の存在

退職して3か月くらい経たころで、思いがけない問題がいろいろ出てきた。日課にしていたゴルフの練習も急にやりすぎたためか肘がテニス肘になり痛くてできなくなってしまった。また図書館は平日なのに高齢者の人で溢れており、席もままならず次第に足が遠のくようになってきた。また、どこに行くにしても意外と交通費がかかる。定期のありがたみが身に染みる。思い描いていた計画が次第に狭まってきてしまった。そんなときに50代後半の女性二人とお茶を飲む機会があり、その際に彼女たちの夫の定年のことが話題になった。私が「夫が定年になって一番困ることって何?」と聞くと、声をそろえて「仕事が増えること」何のことかと思えば昼食のことである。夫が家にいると今までは自分のことだけだから食事の時間も料理も適当にすましていたけれど、そうもいかなくなる。たまに友達とランチに出かけるときも気を使わなければならない。「1日1食は外食してほしい」「出かけるときはいちいち行き先を告げ、帰宅時間も言わなくてはならず苦痛だ、まるで監視されているようだ」それから夫は定年したからといって好きなことをしているけれど、私たちは相変わらず家事をこなしている、不公平だ。「私たちも主婦を定年退職したい」出るわ、出るわ、夫への不満。ただただ黙ってき聞き入るばかり。また、私と女性たちの共通の知人の女性は夫が定年になった途端に「うつ病」になってしまったという話も。以前テレビで見たことのある亭主在宅症候群、いわゆる夫源病というやつだ。テレビの中での話だと思っていたが現実に身近に起こっていることを知って驚いた。定年退職した夫の存在を妻はどう思っているのだろうか。他人事のように女性陣の話を聞いていた。

私の居場所は我が家?

今から考えると、会社というところは学校のクラブ活動のようなところであった。いろんなクラブ(会社・部署)がありそれぞれに所属し、目的を持ち目標に向かってより良い成績を目指し活動し、次々と卒業(定年退職)していく。学校には先輩がいて教師もいる、会社も先輩がいて上司がいた。時には部下や後輩を先輩として指導してきた。それぞれ目標を達成するための、お手本が常にあった。退職後、目的や目指す目標もなく、やみくもに時間を消費することのみに邁進してきた。しかし3か月経って噴出してきた問題や違和感が少しわかってきたような気がする。今まで家よりも会社の職場が自分にとっての居場所であった。1日のうち大部分を職場で過ごし、そこに生きがいが有り、社会的役割があった。退職後の居場所は我が家?どうも違うような気がする。

お前は自立しているのか!

やることがないのだから時間の消費もできない。思ったことができないのだから違和感が出てくる。私達の人生には常にお手本があった。すでにプロデュースされた人生だったのかもしれない。自分が自立していないなどと考えてもみなかったし、面と向かって言われたこともない。自身に「お前は本当に自立しているのか?」と問いかけたときに答えに窮した。

※次回、第4回は「プライドと自己嫌悪」 バックナンバーはこちら

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