シニアが社会参加することで元気になる(日本元気シニア総研 代表 富田眞司)

(初出 2013年8月 「元気シニアへの提言」シリーズより)

在宅シニアをいかに社会参加させるかが課題となる

1. シニアの社会参加状況は低い

超高齢化時代に突入する日本にとっての課題は、医療費や介護費用の増加にいかに対応するかです。それは、国家予算の中で伸び続けているのが社会保障だからです。その費用を最小限の抑えるには元気なシニアを増やす必要があります。

元気シニアを増やすためには求められるのがシニアの社会参加です。リタイア後、社会との交わりがなくなると、情報も不足し、会話も少なくなります。さらに、運動量が少なくなり、脳の働きも少なくなります。これでは、介護予備軍を増やし、老化を早めることにもなります。

しかし、現状では、シニアの社会参加は決して高くありません。ジーエフ調査によれば、積極的に社会参加している人は、男性60代で20%程度、女性では33%となっており、低い状況といえます。とくに、60代男性の社会参加の低さが気になります。

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2. 社会参加できない理由

では、日本のビジネスパーソンが社会参加できない理由って何でしょうか。

それは、企業中心社会がもたらした弊害とも言えます。日本のビジネスパーソンは仕事一途という人が多く、勤務先以外での人との接点が少ない人が多く、まして、地域との関わり合いも少なくなっています。

社畜といわれる会社人間のビジネスパーソンは会社を離れると、仲間も少なく、孤立してしまいます。多くの時間を仕事と職場の人間関係の中で暮らし続けたサラリーマンは、退職すると、突然、ビジネスパーソンの人間関係を喪失することになります。

自宅のある地域社会との個人の人間関係を築いてこなかったビジネスパーソン、中でも会社人間といわれる人の退職は仕事だけの人間関係をなくし、「社会的孤立」することになります。その結果として、在宅に「閉じこもり」になる人も多くいます。

一方、女性はといえば、亭主がビジネスパーソンとして働いている間、「亭主元気で留守が良い」とばかりに、地域での仲間と、観劇や食事会などに参加する人が多いのが実態です。それでも、シニア女性の社会参加も、あまり高い数値ではありません。

元気シニアを増やすためには、もっと社会参加することが求められます。

3. シニアに社会参加させる方法

では、シニアの社会参加を増やすにはどうしたらよいでしょうか。シニアが社会参加する方法には、三つあります。

(1)行政が実施する、地域のイベントに参加する

最も手短なのは、行政などの公共機関が主宰する地域のイベントに参加することです。広報誌になどに掲載されていますので、それを見て参加することができます。

●老人クラブの活動に参加する
地域ごとに「老人クラブ」があります。社会推進協議会が運営しています。老人クラブは、かつて全国800万人以上の参加者がいましたが、今では700万人に減少しているとのことです。色々なサークル活動が行われており、参加費も安いので参加をお勧めします。身近にあるのに活用されないのは、知らない人が多いからでしょう。

●行政サービスを活用する
今、行政もシニア向けに多くのイベントを開催していますので、それに参加されるのもいいですね。例えば、世田谷区のホームページを見ると8月17日だけでも、30件近いイベントが開催されています。

ちなみに、世田谷区では、特にシニア向けに「いきがい講座・生涯大学・高齢者講習会」が開催され、「いきがい講座」は60歳以上の方を対象に通年で実施しています。 生涯大学では、社会・福祉・生活・文化などのコースがあります。

筆者も生涯大学で「元気シニア」をテーマに講演したことがあります。平均年齢70代、中には90代の女性が参加される、笑顔に包まれた、とても楽しい講義になりました。

今、全国の行政ではシニアの活性化のために活動が積極的に展開されています。

筆者も千葉県勝浦市で7月から実施されているシニア向け講座「元気で繁盛大学校」の企画づくりに参加しました。「元気で繁盛」と言う言葉は地域のシニアが「元気になる」ことと地域のビジネスが「繁盛する」意味で筆者が提案した名前が採用されました。

(2)民間が運営するスクールで勉強会に参加する

行政が主宰するイベントとは別に、民間が主宰する勉強会があります。「カルチャースクール」「大学のエクステンションカレッジ」などです。

筆者も複数のエクステンションカレッジで「企画書づくり」や「元気シニア」に関する講師をしていますが、熱心な方が受講されています。行政が実施するイベントより、受講料は高くなりますがすれだけにより熱心な方が受講されているような気がします。

(3)シニア向け各種勉強会やイベントに参加する

8月7日に開催された「自分史フェスティバル」に参加しました。8月7日は「自分史の日」ということで、一般社団法人自分史活用推進協議会が主宰して開催されたものです。熱心なシニアの方が多く参加されていました。

その前日、8月6日には、「生涯現役主義」講演会が株式会社時評社主催で開催されました。後援に厚労省、国土交通省、経産省、総務省、全国知事会、全国市長会、全国町村会などが名を連ねた熱のこもった勉強会でした。

8月24日には「終活ファスタ」が開催、9月18日-20日まで国際福祉機器展が開催されるなど、急速な高齢化社会の発展に伴いシニア向け勉強会やイベントが開催されています。

筆者も「元気シニアネットワークの集い」を主宰し定期的に開催しています。毎回、色々な方が参加されています。

4. シニアの社会参加への提言

シニアの社会参加について述べてきましたが、結びとしてシニアの社会参加を活性化するための提言をさせていただきます。

(1)シニアの意識改革を行う必要性がある

せっかく勉強の場があってもシニアが参加したいという意識がなければ、シニアは参加しません。そのため、シニアが社会することの意義やメリットなどをマスコミやWebなどを通じて積極的に訴求する必要があります。その対策が望まれます。

多忙なビジネスパーソンを卒業し、何もしなくてもよいことが楽しい時代はほんのひと時です。その時期が過ぎると、「何もしなくてもよいこと」が人生の目的意識をなくし、苦痛になってきます。社会で起きていることも理解していないシニアが「オレオレ詐欺」に簡単にひっかかってしまうのです。

それだけではありません。社会参加することで、人との会話ができ、「脳の活性化」に繋がります。強いては、認知症予防にもなります。沢山のシニアが社会参加することで、高齢者の医療費、介護費用の削減にも繋がります。

(2)地域での呼びかける仕組みづくりが必要である

会社人間から地域社会で生きることへの「心の転換」ができる仕組み作りが必要です。退社後20年以上も地域で生きるシニアに「何のガイダンス」もないのでは、せっかく行政で準備されているシニア対策も、必要とする人に伝わりません。

超高齢化社会でも、元気な社会を作るには、「地域社会デビュー」の場をしっかりと作りことです。それを社会の仕組みとして考えることが求められます。

(3)参加しやすい仕組みづくりを行う

三つめは参加しやすい仕組みづくりです。参加する動機づけをいかに作るかです。例えば、仲間が声をかけ、仲間と一緒に参加するような仕組みをつくる方法があります。仲間と一緒に参加すれば、何らかの特典を付けるなどの方法があるといいですね。

また、シニアの社会参加にインセンティブを付ける方法もあります。行政などが主宰するシニア向けイベントに参加することに対する行政からのプレゼントのような仕掛けや仕組みづくりです。

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