イタリアで中世の旅をする
旅行担当研究委員の斉藤正洋です。
イタリアのどこを旅していても古代ローマの遺跡に出会います。
これはどういうことかというと……
・建造物が非常に堅牢であった
・壊すには惜しいものであった
・幅広くローマ的な文化が浸透していた
ということだと思います。
まとめると、非常に「古代ローマでは安定した治世が広範囲の地域で続いていた」ということになります。古代や中世を関係のない過去と捉えず、古代から現代をつなげて考えてみると、人のやってきていることなんて二千年前も大して変わっていないことに気がつきます。
日本では、至る所に古代の跡があるわけではありません。ローマにはパンテオンのように2000年前の建物が、ほぼオリジナルで残っています。自動車や飛行機はないにしても、暖房もあり暖かい服もあり、人が考えていることは現代とあまり変わっていないということが実感できるのです。この実感できる感覚が非常に歴史を身近なものにしているように感じます。
日本では、近代以前の遺跡が重要文化財と呼ばれ、博物館にしまわれている状態なので、普段見ることができません。海外と比べると日本は歴史観を実感する場所がかなり少ない国です。
あげくに高度成長期に中世から近代の古いものを、安全性のためにほとんどを壊してしまっています。中国の文化大革命でもそこまで無くなってはいないです。
こうした現実も、外国と地続きでないためか比較されていません。比較するものがないと、独りよがりな論を展開しがちです。
歴史観を旅するというのは、日本人にとって簡単なことではないのですが、非常に楽しいことなので、紹介します。
訪れた場所の歴史を、自分の歴史になっていく
旅でお勧めしたいのは、時間が許せば同じところを訪ねてみることです。初めて訪ねた場所では、新しい文化への出会いと驚きで、数日の旅程は過ぎ去ります。興味が続いている国があれば、旅から帰っても、その国に関わる面白そうな本を読み、また行きたくなります。連れて行ってもらって、下ろされて見るだけの旅行だと、後につながりづらいのです。一度の旅が興味に変わり、帰国しても続くようであれば、その後の人生を豊かにします。
イタリアはそんなことにうってつけの場所です。古代ローマを見に行くことも、ルネッサンスの時代を見に行くことも、現代を見に行くこともできます。旅のテーマを変えるだけで、同じ場所を訪ねても何度でも新鮮な旅になります。実は、これは日本にいても同じなのですが……それはまた別の時に。
イタリアの都市は、最低でも一日かかる。
例えばピサという小さな街があります。斜塔で有名なピサです。駅から斜塔まで歩いて30分くらいです。斜塔のあるドゥオモ広場以外で、目立った観光名所はありません。それでも一泊したほうが面白いと思います。
のんびりと駅近くの宿から、ドゥオモ広場まで30分くらいかけて歩くと、街の雰囲気を感じることができます。学生が多く、近くに大学があるということに気がつくと思います。なぜだか女子学生が多く、方々の建物に寄りかかって地べたに座って何かしらの本を読んでいたりします。地べたに座るのは日本ではだらしないことですが、イタリアでは気にすることでないのかな……なんて考えたりしながら歩きます。
食べ物屋さんでお店の外に椅子とテーブルが置かれていると、ちょっとメニューを見て安かったら地元の人みたいに食べてみたりします。高くない地元の店であれば、よほど不味くなければ楽しい体験です。
日が暮れれば、ピサ唯一の商店街といえるコルソイタリア通りが賑わいます。地方都市の普通のイタリア人の雰囲気に入り込むのも、結構楽しい体験です。個人旅行でないと機会が非常に少ないかもしれませんが。
観光地以外興味がない人にとっては、普通の街の普通の姿は時間の無駄かもしれませんが、丸一日滞在して、街を味わうというのもお勧めです。
なによりもうれしいのは、自分だけの楽しい時間を体験できることです。ピサの旅の雰囲気はこちらをご覧ください
http://www.saitoon.com/afterworld/Italia2013.html