遺言書の書き方(法律相談 研究委員 大竹夏夫(弁護士))

遺言書の書き方って、実はよく知られていなんです

昨年の流行語大賞に選ばれた「終活」に関心が高まり、
遺言書を書こうという方が増えています。
最近では、30代、40代の方からも、遺言書の相談が増えています。

「遺言書」というと、知らない人はいないくらい有名ですよね。
法律の制度としては、スター的な存在です。

しかし、しかしです。

では、遺言書の書き方を知っている人は、どうでしょうか。
意外とご存じない方が多いのではないでしょうか。

遺言書という言葉はよく聞くけれども、
実際に書いたことがないし、書かれたものを見たことがない。
それが現実なんです。


遺言書の種類は三つあるってご存知でしたか?

法律により、遺言書には、三つの種類があります。

1) 自筆証書遺言(じひつしょうしょいごん)
2) 公正証書遺言(こうせいしょうしょいごん)
3) 秘密証書遺言(ひみつしょうしょいごん)

このうち、秘密証書遺言は、ほとんど使われておらず、お薦めもしていません。
もっとも簡単で、費用もかからないのが、自筆証書遺言です。

自筆証書遺言は、その名のとおり、自分で書く遺言書です。


自筆証書遺言は、意外と難しいって本当ですか?

本当です。
民法によって、厳しく定められています。

そこで、ここでクイズを出しましょう。
次の遺言は法律上認められる(有効)でしょうか?

問題1 遺言を書く紙がなかったので、新聞の折込チラシの裏に書いてしまった。
問題2 スマートフォンだと簡単にビデオが撮れるので、ビデオで遺言を残しました。
問題3 資産がたくさんありすぎて、手書きで書いているとたいへんなので、ワープロで書いて、日付と署名だけ手書きで書いて捺印しました。
問題4 アメリカで働いていたことがある太郎さんは、何でもサインで済ましていたので、遺言書にもサインだけで、捺印しませんでした。
問題5 遺言書の日付を「平成26年1月吉日」と書きました。

以上の五つですが、いかがでしょうか?
正解をお教えする前に、解説しましょう。

遺言の要件(条件)は、大きくわけると、五つです

要件1 紙に書く

遺言書は、現在もまだ、紙に書く必要があります。
録音したメッセージでは、遺言書としては効力がありません。
ビデオも同じです。

逆に、紙であれば何でもOKです。
メモ帳はもちろん、チラシの裏でも、レシートの裏でもOK。
もっとも、これらはお薦めはしません。
トラブルの素です。

要件2 すべて自分で書く(自署)

署名だけでなく、本文も自分で書く必要があります。
ワープロで本文を書いて、署名だけ自筆という遺言書は、無効です。
他人に代わりに書いてもらうのもダメです。一部でもダメです。

要件3 署名

名前を自署する必要があります。
本名だけでなく、芸名でも誰なのか分かればOKです。

要件4 捺印

印鑑で捺印する必要があります。
よく実印(登録印)である必要があるか尋ねられますが、実印である必要はありません。
認め印でもOKです。

要件5 日付

必ず日付を書く必要があります。
年月日が特定できないといけません。
「平成26年1月」ではダメです。

逆に、特定できればよいので、「平成25年の誕生日」でもOKです。
もっともトラブルの素ですので、このような表現はお薦めしません。

以上のように、自筆証書遺言書の要件は厳しいので、
無効になってしまうケースも少なくありません。
作成される場合は、十分に気をつけてください。

クイズの答えです

問題1 遺言を書く紙がなかったので、新聞の折込チラシの裏に書いてしまった。

正解は◯。認められます。
紙であれば、何でもOKです。

問題2 スマートフォンだと簡単にビデオが撮れるので、ビデオで遺言を残しました。

正解は×。認められません。
今でも紙で書く必要があります。

問題3 資産がたくさんありあすぎて、手書きで書いているとたいへんなので、ワープロで書いて、日付と署名だけ手書きで書いて捺印しました。

正解は×。認められません。
すべて自分で書く必要があります。
実は、資産をすべて書く必要はありません。
もし一人に相続させるのであれば、「すべての資産を」でOKです。

問題4 アメリカで働いていたことがある太郎さんは、何でもサインで済ましていたので、遺言書にもサインだけで、捺印しませんでした。

正解は×。認められません。
捺印は必ず必要です。
理由はありません。
ただ、法律でそう書いてあるからです。
本文も署名もすべて書いてあるのに、捺印がないから無効になってしまう。
とても残念ですが、法律ですから、仕方ありません。

問題5 遺言書の日付を「平成26年1月吉日」と書きました。

正解は×。認められません。
日付が特定できないとだめです。

遺言書の文例

もっとも簡単な遺言書としては、次のようなものです。

———————————-

      遺 言 書

 私は、妻鈴木花子にすべての財産を相続させる。

   平成26年1月15日

     鈴 木 太 郎  (印)

———————————-

簡単ですね。
これなら1分もかからずに、書けてしまいます。
でも、妻が先に亡くなったらどうするか、遺言執行者を指定するかどうかなどなど、
いろいろ考えると、複雑になっていきます。
ですから、やはりしっかりとした遺言書を書くのであれば、
専門家である弁護士にご相談ください。

(お問合せはこちらへ)
研究委員(法律相談担当)大竹夏夫(弁護士)

弁護士法人レセラ四ツ谷法律事務所(東京弁護士会登録)
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