どうする2025年問題! オレンジカフェ(認知症カフェ)という居場所 地域福祉・介護担当 研究委員 太田純平

10年後、認知症700万人時代が訪れる

日々の生活の中で、認知症の人と関わることはありますか? 漠然とは知っているけど、まだまだ理解していない、認知症は遠い存在だという方も多いのではないでしょうか。しかし、もしシニア世代の5人に1人が認知症の世の中になったらどうでしょう。身近な家族や親戚、知り合いに認知症を発症する人がいてもおかしくありません。厚生労働省は今年に入り、認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)を発表しました。増え続ける認知症に対するものですが、その内容には以下のようなものがあります。 ・2025年までに団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となる ・認知症の人が700万人に達する(65歳以上人口の約5人に1人の割合)※2012年現在:約462万人 ・認知症の人が認知症とともによりよく生きていくことができるような環境整備が必要 いわゆる2025年問題。今、シニアの世界では、健康寿命を延ばそうと様々な取り組みが行われていますが、認知症となり介護が必要となる方が増えることは確実といえます。その避けられない未来を見据え、認知症の人が増えても安心できる地域づくりが必要なのです。

地域に認知症の人がいて当たり前。誰もが普通に接することができる地域づくりが急務

周りに認知症の人がいて当たり前の日本に向けて、どうすれば誰もが安心して暮らしていける地域をつくることができるのでしょうか。そのためには、まず、認知症の人やその介護をする家族が安心できる居場所が必要です。そして、認知症に関わりのないと思っている一般の人たちが認知症の人に対して理解を深めていくことも大切です。なぜなら、地域住民の理解がなければ、認知症の人やその家族はみるみるうちに社会から孤立していってしまうからです。 そこで、今、全国に広まりをみせ、注目されているのがオレンジカフェ(認知症カフェ)です。オレンジカフェは、認知症の人とその家族が、地域の人たちと気軽につどい、情報共有や交流の中で社会参加を促す活動の場です。認知症になっても地域での生活を続け、人とつながりを結ぶ役割として期待されています。

[実例]鎌倉のケアサロンさくらが運営するオレンジカフェ

鎌倉市の今泉台という人口約5300人、高齢化率45%の地域に、認知症対応型デイサービスの(株)ケアサロンさくらが主催するオレンジカフェがあります。 (※ケアサロンさくら 地域の活動:http://sakura-kamakura.com/?page_id=414) 開催は月に1度、自由な集いの場として認知症サポーターの公式マスコットであるロバのストラップ作りやジェンガ等の遊びを通して、地域との交流をしています。参加費は無料で、コーヒーなどの飲食もでき、ふらっと見学に来られる方もいるとのこと。“認知症”のカフェというと、福祉の色が強く入店しにくい雰囲気を感じるかもしれませんが心配いりません。一歩踏み入れれば、自由な雰囲気の空間に広がる自然な笑顔に、筆者も「誰が認知症なんだろう?」と思ってしまうほどでした。参加者の居心地のよさそうな表情がとても印象的です。 稲田秀樹代表は、「認知症の人やその家族が地域で孤立感なく、安心して生活できる土台をつくることが目的。現状では、認知症になると本人は不安から外に出掛けたくなくなり、家族も外に出したくなくなってしまうこともある。日々の介護もあり、本人だけでなく、家族までも地域から孤立してしまう」と話していました。認知症の人やその家族を地域から孤立させない。自由な空間で居心地の良いケアサロンさくらだからこその、強い思いを聞くことができました。 1502orangecafe

オレンジカフェは、認知症の人だけでなく、その家族や地域の人みんなの居場所になる

社会の中で生き、組織や仲間と共に過ごす。誰にでもその人の居場所があるはずです。しかし、認知症という病気になると、本人やその家族までも、そのような当たり前の居場所を奪われてしまうことがあります。 オレンジカフェの特徴は、地域に対して開かれていて、地域住民とのつながりを大切にしていることです。今後この居場所がさらに広まっていくにつれ、多くの人の交流の場となります。そして、認知症の人が増えても地域で暮らしていけるよう、みんなで支えていけるようになることを願います。

まとめ

筆者は、特別養護老人ホームの介護職として、日々感じることがあります。それは、認知症は、コミュニケーションの障害であること、そして、自分の置かれている状況を把握することが難しくなってしまうことです。多くの認知症の人は、自分に自信がなくなり、不安な時間を過ごしています。だから、私たちが「大丈夫」「間違っていないよ」「あなたの味方だよ」という心のメッセージを送ることで、重度の認知症の人でもホッと安心した表情になります。同じように、地域でも認知症の人を認めてくれる居場所や一緒に笑ってくれる仲間が必要なのです。 地域全体で、認知症の人のことを知り、その存在を認めることが認知症の人の一番のケアになり、居心地の良さにつながるのだと思います。地域でオレンジカフェを見かけたら、ぜひふらっと立ち寄ってみてください。きっと認知症の人の笑顔に出会えるはずです。

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