第4回 夢活・86歳の夢
「夢活」担当研究委員の藤生です。今回は86歳のパワフルなシニア男性を紹介します。この人は若者に負けないくらいどんどんと自分で夢をかなえて行っている江戸っ子です。
【夢のはじまり】
この男性は鈴木さんという現在86歳の男性で、60歳の時に外資系企業の社長にお願いされて、その会社の総務部長になった。1987年、この会社と親交の深い歌手ジョン・デンバーによる、平和と環境をテーマにしたイベントがアメリカであった。鈴木さんはこれに参加して大変感銘を受け、このようなイベントを日本でも開催したいと思い立った。帰国後、この会社の社会貢献として「ひとつの世界、ひとつの人類」というコンセプトのOne World One People活動を立ち上げ、1990年には数千人規模のイベントを開催、当時注目され始めたエコロジーや地球市民の意識を一般の人々に広めていった。
【想定外の出来事】
ところが、しばらくすると、この会社がアジアの拠点を日本から香港へ移すことになった。そのため日本でのOne World One People活動は会社として続けられない、ということが起きた。
しかしながら、実はこの数年間に多くのボランティアが育っていた。会社の支援がなくとも、それぞれが各地域で環境や平和や人権に関する社会貢献活動を行ったり、チャリティバザーを行って資金を作り出していた。鈴木さんはこの可能性に気付き、独立したNGOとしてOne World One People協会を立ち上げ、ボランティア仲間とともにこの活動を継続することにした。
【転機と成長】
One World One People協会になってから、スリランカに幼稚園と井戸を贈る活動が中心になってきた。なお、ただ贈るだけではなく、実際にスリランカに行って村人と一緒に建設に参加し、現地の人と交流を深める、というツアーも行っていた。
ある時、ツアーに参加した18歳の若者が、スリランカを自転車で走りながら平和を訴えようという提案を行った。当時のスリランカは内戦状態で、彼はそのことにひどく心を痛めていた。鈴木さんはスリランカ最大のNGOであるサルボダヤの青年部に話を持ち込んだ。
そして2004年に、日本人約20人とスリランカの青年のべ約200人が一緒になって250kmの道を2泊3日かけて、平和を訴えながら自転車で走破する ”Bicycle Rally for Peace” が実現した。政府・軍・警察も全面協力してくれて、マスコミにも大きく取り上げられた。最終地点の古都キャンディでは、州知事主催の歓迎会に出席し、日本人一人一人に完走証が手渡された。平和を求める若者の声は多くの人に届いた。
鈴木さんは夢を語り実現したこの若者を見て、心のパワーを実感した。そして若い人たちがこのOne World One Peopleで成長していくのを目の当たりにした。
【これからの夢】
鈴木さんの中学・高校時代は戦時中で、「鬼畜米英、エイヤッ!」と叫んで竹やりで藁人形を突く軍事教練が英語の授業の代わりに行われていた。それから終戦になり、日本は平和な時代に経済発展し、国際交流が盛んになってきた。今の若者は、国を超え人種を超えて、ひとつの世界、ひとつの人類として世界中で活動することができるようになった。
鈴木さんとしては、これまでのように自分が人々を引っぱって自分が世界を変えていく、というところから、これからは若い人たちをリーダーとして育てていくことが夢になってきた。
鈴木さんがOne World One Peopleの活動を始めてから二十数年、夢はまだまだ未来へと延びていく。