老後に必要な生活費ってどのくらい?(日本元気シニア総研 代表 富田眞司)

(初出 2011年10月 「元気シニア時代への提言」シリーズより)

今回のテーマは、定年間近なプレシニアの方や若い方に「老後に必要な生活費」についてお話します。これから定年を迎える人にとっては、本当に年金で生活できるのか、毎月どのくらい不足するのか、気になるところです。

夫65才以上、妻60才以上のふたり暮らしにかかる1か月の生活費の平均は、月23万円4555円!

定年後の生活費は、暮らし方によって、大きな差がでます。一概にいくらというわけにはいきませんが、高齢の夫婦(夫65才以上、妻60才以上)の1カ月の平均生活費について、国が発表したデータ(総務省「家計調査」2010年)が参考になります。

毎月の家計費は、意外と少なく、月23万円強です。これだけあれば、夫婦ふたりで「少なくとも平均的な暮らしをすることができる」ということです。この数値には、すべての生活費が含まれています。

もちろん、医療や介護にかかるお金も含まれた金額です。月23万円は年間にすると276万円です。この程度の生活費なら何とかなりそうですね。

月23万円の家計費で多いのは、食費、交際費、交通・通信費の順

1カ月の出費の内訳が気になりますが、詳しくは下記をご覧ください。

★高齢者夫婦の生活費、消費支出合計:23万4555円
(出典:総務省「家計調査」2010年)
多い出費は、1位がやはり食費で5万7876円。2位が交際費で3万1057円、3位が交通・通信費2万4652円です。これは、あくまでも平均なので、すべての人にあてはまるものではありませんが、老後の出費はあまりかからないことがわかります。気になる医療費ですが、1万4959円となっています。もっとかかると思われそうですが、平均では意外と少ないようです。

60代から70代前半は、元気な人が多いため、少ない出費で済みますが、75歳上になると、体力も衰え、医療費が増えますので、もっと高額になります。高額な医療費を負担しないためにも、いつまでも元気でいたいものですね。ちなみに、筆者(70歳、妻64歳)の医療費は殆どなく、年間1万円程度です。食事や散歩など、規則正しい生活など、健康に配慮した暮らしをしています。

高齢者が取得する厚生年金とほぼ同じ、厚生年金があれば、何とか生活できそう?

ところで、高齢者の生活費は多くの方は年金生活になりますが、年金で受給する金額で生活できるのでしょうか。高齢者が受領する年金には、厚生年金、国民年金、企業年金などがあります。多くの高齢者は、厚生年金か国民年金のいずれかが受給されています。

厚生年金の受給額は夫婦で23万円程度、国民年金の受給額は夫婦で13万円程度と言われていますので、厚生年金受給者は生活費とほぼ同額になり、年金での生活が可能と言えます。

一方、国民年金受給者は国民年金だけでは、生活が厳しいようです。国民年金受給者の方たちは、自営業の方が多く、高齢者になっても、年金受給しながら仕事をされておられれば、不足分がカバーできそうですね。

豊かな暮らしには、月35-40万円必要、厚生年金だけでは、12-17万円不足

ところで、好きな趣味や旅行、たまには、孫にプレゼントするなど、もっと豊かな生活をしたいと思うとどれくらいかかるのでしょうか。楽しみ方によって費用が違ってきますが、シニア向けのアンケートは、豊かな生活をするのはどの程度のお金が必要ですかという調査がありました。

数年前には、豊かな生活には、月額38-40万円程度は必要という回答が返ってきましたが、最近の調査では、月額35万円程度となっています。厚生年金で支給される月額平均額と比べると、月額35万円に対しては、12万円、40万円に対しては、17万円不足します。

企業年金を受給されている方は、不足分を補うことができます。厚生年金だけの方は、豊かな生活に必要な生活費を資産から持ち出すか、仕事での収入が必要となります。

元気なうちは、豊かな暮らしの不足分を働いて補足するといいですね

定年後も元気なうちは、ちょっと働いて、豊かな暮らしをおくるのもいいものです。月額15万円程度の収入が確保できれば、豊かな暮らしの仲間入りができます。働くことは、体の健康だけでなく、心の健康にもいいですね。筆者も、定年後、執筆や講演、顧問などで収入を得ていますが、とても元気です。できれば、何時までも働くことができ、生涯現役で活躍できれば、いいなと思っています。

これから定年を迎える方のヒントになればと存じます。定年後の働き方については、今後の元気シニアナウでご紹介します。定年後の心配は何といっても健康です。健康なればこそ、出費も少なく、楽しく生きることができるからです。健康を害すると、なかなか回復せず、介護生活にもなりかねません。

国民医療費は年間36兆円(2009年度)、65歳以上が20兆円、全体の55.4%占める

そこで、気になるのが医療費です。2009年度の国民医療費は36兆67億円、年間1人当たりでは3.6%多い28万2400円となり、ともに過去最高を更新。国民医療費は保険診療の対象となる治療にかかった費用の総額で、患者の窓口負担分なども含みます。年齢別では65歳以上の医療費が19兆9479億円と、全体の55.4%を占めています。

また、1人当たりの医療費は、65歳未満が16万3千円、65歳以上は68万7700円で、75歳以上は85万5800円となっています。 高齢者の医療費の全平均値(前述)が年間約18万円ですから、65歳を越すと増加し始め、75歳以上では、5倍近くになることがわかります。くれぐれ健康には気をつけたいものです。

親孝行旅行のトレンドは温泉人間ドックとか

最後にシニアにとっては、嬉しい話をしましょう。自分を育てるために長年働き続けてくれた両親への感謝の気持ちとして、旅行をプレゼントしたいという人は多いという話です。2010年にJTBなどが行った親孝行に関するWeb調査によれば、回答者の48%が「親に旅行をプレゼントしたことがある」と答えているそうです。楽しい思い出づくりには、やっぱり日常を離れた「旅」が一番でしょう。

一体どんな旅が親に喜ばれるのでしょうか。最近注目されているのが、旅行と医療をセットにした「医療ツーリズム」です。日本の豊かな観光資源と、高い医療技術を生かしたものです。定年を迎えると、定期的健康診断を受診する機会が激減するため、逗留先で健康診断や人間ドックが受けられるとなると興味を持たれるそうです。近く定年を迎えるあなた、お子様から「温泉人間ドック」がプレゼントされるかも知れませんね!

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