「エンディングノート」を書きませんか(日本元気シニア総研 代表 富田眞司)
(初出 2012年7月 「元気シニア時代への提言」シリーズより)
今、「○○○○ノート」が静かな話題に
今、「○○○○ノート」が話題になっています。「就活ノート」「婚活ノート」「エンディングノート」「天声人語書き写しノート」などがあります。いわば、目的達成するためのツールで、自分で自由に書くものや、フォーマットを使って書くものがあります。フォーマットを使ってかくものは、文具と書籍が一体化されたものです。
例えば、「天声人語」書き写しノートがあります。このノートは朝日新聞に掲載された「天声人語」を切り取り、ノートに貼りつけ、その下に、「天声人語」に書かれた文章を清書するものです。「天声人語」と言えば、新聞のコラムの代表的なもので、内容が素晴らしく、熱心な読者も沢山います。その読者の要望にこたえる形でノートとなったのでしょう。実際に、筆者の娘と孫が手作りの「天声人語」ノートを使っています。新聞に掲載された記事をノートに貼りつけ、内容の清書とその感想を娘(40歳)と孫(11歳)が共同で綴っています。
話は変わりますが、筆者が小学生のころ、担任の先生から「1日1頁」ノートを書かされたことを覚えています。何を書いても良いというものですが、毎日必ず1頁書くというものです。いわれたことを学ぶのではなく、自主性を重んじて学ぶことができました。その恩師のことは、今でも忘れません。
「エンディングノート」とは
ノートの多くは、「目的を達成する」ためにあるものですが、今、話題になっている「エンディングノート」は、シニアが「自分の人生の整理」や、「残された家族への思い」を含めて書くもので、他のノートとは重みが違います。
高齢化時代を迎え、週刊ダイヤモンドから「葬儀相続エンディングノート2012版」の別冊付録に「エンディングノート」(780円)がつくなど、今、ちょっとした話題になっています。
では、「エンディングノート」ってどんなものなのでしょうか。高橋憲一郎著、「自分を記録する エンディングノート」の表紙には、「人生の引き継ぎ帳」と記されています。筆者は、「自分の最後を迎える覚悟を子孫に残すもの」と考えています。
アマゾンでエンディングノートを検索すると101冊表示されます。その主なものをあげてみました。
「書くだけで安心 あなたと家族のための エンディングノート」1575円 本田桂子著 日本実業出版社
「エンディングノート」1680円 小学館
「幸せのエンディングノート」1680円 主婦の友社
「エンディングノート」1575円 桂美人著 角川書店
「そのまま書ける!パソコンでも使える!明日のための「マイ・エンディングノート」」2079円 本田桂子著 技術評論社
「自分を記録するエンディングノート」2000円 高橋 憲一郎 CISC出版などです。
インターネットからダウンロードできるものもあります。
エンディングノートに書く主な内容は五つ
では、一体、エンディングノートには、何を書いたら良いのでしょうか。いくつかのエンディングノートから分析すると、その内容は、大きく四つにわかれます。
1. 自分の人生・自分史、を子孫に残すもの
自分がどんな人生を送ってきたのか、どんな人間なのかを書くものです。自分自身の「心の整理」であり、残された「家族へのメッセージ」でもあります。項目としては、自分自身のプロフィール、経歴、生きざま、楽しかったことなどの思い出、家族に残すこと、身辺整理などです。
2. 財産録(遺言を含め)
自分がもっている財産の内容を明記するものです。自分が所有している資産や不動産を記録として残すものです。資産は「預貯金」「株式」「有価証券」「公的年金内容」「個人年金」「各種保険」「各種貴金属類」などを書きます。不動産は所有する不動産の内容や登記簿の保管場所などを書きます。急に自分が他界したとき、残された家族が困らないように、すべての財産を記録するものです。
あわせて、その遺産を誰に相続するのかも整理することができます。ただし、エンディングノートは、遺言ではないので、ここに記した相続内容は法的には意味をもちません。遺産相続として法的効力を持たせるには、別途、遺言を書く必要があります。
3. 医療・介護(延命)
医療に関する自分の健康のデータである体質、持病、病歴などを書きます。今後、ガンなどの病気が発見された場合や、急病で入院した時など、病院での病名告知や介護の希望、延命措置に関する要望、臨終を迎える場所、尊厳死、安楽死、献体の希望などや、緊急連絡先などを書くものです。命に関係するデータです。しっかり記録されていると、いざという時に役に立ちます。特に、延命措置に関する意思表示は、残された家族にとってとても重要な意味をもちます。
4. 葬儀の希望
自分の葬儀に関する要望について記述するもので、葬儀の規模、方法、内容などについての希望を書くものです。今、葬儀の方法は、いろいろあります。また、葬儀にかかる費用は200万円もかかるようです。東京都が募集した樹木葬には多数の応募があり、話題になりました。そんな葬儀についての希望を明記するものです。
また、葬儀の連絡先リストも書きます。葬儀の連絡して欲しい人、連絡して欲しくない人などに分けて書くと、役に立ちます。長年住み慣れた故郷で老後を迎える人にとっては、地域での連絡網がしっかりしているので、葬儀の連絡が入ってきますが、故郷から離れた場所で生活している人にとっては、葬儀の連絡が届かず、後で知ることになります。とても残念に思うことがあります。筆者もその一人です。幼馴なじみの訃報は、多くの場合、年末に訃報が届きます。年賀状を出す段階になってやっと、知ることができます。さらに、訃報通知が来ないと、葬儀のことを知らないで、年賀状を送り、返信ハガキに残された家族から、友人が亡くなったことを知らされ、寂しい思いをしています。そんなことにならないように、自分葬儀の連絡先をしっかりと、エンディングノートに残すことにするといいですね。
5. 残された家族へのメッセージ
死を迎えるにあたり、気持ちを整理したり、残された家族にどうすべきかの気持ちを整理するのに役立ちます。日ごろ世話になった方たちに、書面にて書き遺すもので、妻や子供、兄弟、お世話になった方たち、ひとりひとりへのメッセージを元気なうちに、残したいものです。
では、何時書くのが良いか
エンディングノート1冊に、沢山の書くことがあります。その気にならないと、なかなか書けません。
筆者は、カミサンから、エンディングノートと遺言を書いて下さいと前から言われています。でも、書く気持ちはありますが、なかなか手がつかないのが現状です。というのも、筆者は71歳、とても元気です。まだ、現役として仕事を続けています。老後という実感がないのです。それは、まだ死を意識していないからです。
では、エンディングノートは、何時、書くことになるのでしょうか。筆者の場合、恐らく、死を意識したときに、書くことのなると存じます。でも、読者の皆様には、70歳を過ぎたら、書いて欲しいものです。
保管をどうするか
せっかく書いても、「エンディングノート」が、必要な時に発見されないと、意味がありません。そのため、どのように保管するかが課題となります。書いてすぐに家族に見せるというのも、ちょっと躊躇します。事故に遭遇するとか、急に容態が悪化した時に読んで欲しいものです。それまでは、どこかで保管できないでしょうか。
書斎のわかりやすい場所に保存する方法、友人にあずける方法などがあります。また、最低、配偶者など最も身近にいる家族にはノートの存在を伝えておくべきでしょう。
そんな中、金融機関のりそな銀行が、死後の財産処分や葬儀の希望を書き残す「エンディングノート」を預かる新信託サービスを始めました。葬儀で必要になる資金を信託で預かるほか、故人の生前の思い出なども保管するそうです。エンディングノートは委託者の死後に、りそな銀が遺族に確実に届けるというものです。ユニークなサービスですね。