こんなはずじゃなかったシニアライフ 第5回「いまだ方向定まらず」

元気シニアビジネスアドバイザーの原沢修一です。 「こんなはずじゃなかったシニアライフ」その第5回目の、原稿お届けします。

第5回「いまだ方向定まらず」

ビジョンのない社会貢献

退職後に何をしたいかとアンケートをすると、ほとんどの人は取りあえず「ボランティアや社会貢献など人の役に立つことをしたい」と答えるそうだ。 具体的なビジョンがあるわけではなく、ただ一つの選択肢としてそう答えてしまうらしい。本音は楽をしたい、楽しみたいのであり、しかしそれをストレートに言いにくい。 ボランティアや社会貢献について全く考えていなかったわけではない。 自分に合うコミュニティを探すのが面倒であったのと、やっと会社という組織から解放された身としては、また新たな組織に入って人間関係を構築しなければならないことの煩わしさが参加への壁となっていた。 そもそも社会貢献やボランティアの本当の意味すら理解していなかった。 ゆえにいまだ無縁である。

親友からの誘い

ネガティブ調になりかけていたその時期に、中学生時代の仲間から連絡があった。 今でも年に何度かは会っている旧知の友だ。私の退職を聞きつけて電話をくれたのである。「お前、暇を持て余しているのだったらアルバイトで俺の仕事を手伝わないか?」と。 「暇を持て余している」私にとっては嫌な言葉だが、救いの電話でもあった。 彼の職業は測量士、30年のベテランである。かつては7~8人の従業員を雇っていたそうだが、不景気のあおりで公共工事も減少の一途、 従業員も1人減り2人減りと先日まで1人残っていた最後の従業員も辞めてもらったとのことであった。 測量は最低2人1組で行うもの。彼1人では、たまに入る仕事もできないので、仕事のある日だけ手伝ってくれというのである。 週2日程度、朝8時~夕方5時まで。経験も全くない私だが、暇を持て余しているのを見かねて誘ってくれたのである。 時間もあることだし、少しでも彼の役に立つならば、と思いとりあえずやってみることにした。 彼は教え方がとても上手で懇切丁寧に指導してくれた。 彼にこんな面があるのかと普段の彼からは想像できない発見であった。 3か月も経つと測量機器の扱いも慣れて仕事の段取りが読めるようになり楽しくなってきた。しかしすべてが順調だったわけではない。 測量という仕事は想像以上に肉体労働である。彼にとってはどうってことでもないことも、慣れない私にとっては大変な重労働であった。 重い測量機と三脚の持ち運びや境界標のコンクリート杭の掘り起こしや杭打ちと、立ちっぱなしの作業でクタクタになる。 最初の頃は家に帰って入浴し夕食をとるとバタンキュ-であった。 ただストレスがないのがいい。おかげで、ジムに通っているかのように筋肉と体力がつき、顔と腕は日焼けして真っ黒。「最近逞しくなった」と嬉しそうに妻は言う。 週7日のうち1~2日は測量のアルバイト、あとはたまに行くゴルフや野暮用でつぶれてもまだまだ時間はある。 測量のアルバイトをしているときはそれに没頭しているからいいのだが、何も予定のない日は以前ほどではないが先のことを考えると、不安が頭を持ち上げる。

友に感謝

友人からの誘いはありがたかった。暇な時間を少しは解消できたことと、人と接し会話する機会が増えたことが自分を取り戻したような気がした。そして測量をしている時は何よりも楽しかった。定まらぬ方向が今回の機会によって少し変化していく予感がした。

※次回、第6回は「人生を変えた1枚のチラシ」 バックナンバーはこちら

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