「こんなはずじゃなかったシニアライフ」第12回「生きがいはどこに」

元気シニアビジネスアドバイザーの原沢修一です。 「こんなはずじゃなかったシニアライフ」第12回目の原稿お届けします。

第12回「生きがいはどこに」

今回は2つの事例を紹介します

事例1(仕方なく応じた元上司の誘い)

Aさんは定年退職して6か月、やることもなく家でぶらぶらしていた或る日、元会社の上司から電話があった。東京近郊の都市のスナックでシャンソンのリサイタルを定期的に行っているので来ないかとの誘いの電話で会った。そういえば、その上司は長い間フランスの海外勤務が長くその際にシャンソンを習っていたという話は聞いていた。Aさんはカラオケで演歌は歌うけれどシャンソンには全く縁もなかったし興味もなかった。しかし現役時代に世話になった元上司である。せっかくの誘いでもあるので仕方なく今回だけはと思い誘いに応じた。当日、スナックに行くと雰囲気の良い照明、周りの人と話が弾みことのほかお酒がおいしかった。シャンソンのことはよくわからないがお酒を飲むにはとても耳に心地の良い音楽だと思った。お酒の好きなAさんはすっかり非日常の雰囲気が気に入ってしまい定期的に行う上司のリサイタルを心待ちにするようになっていた。そしてスナックに通うようになって半年。なんと演歌しか興味のなかったAさんはいま六本木のシャンソン教室に通っているそうである。まさに60の手習い、びっくりである。なぜそんなことになったのかと聞くと「全く自分の知らない世界がとても新鮮だった」「新しいことをしてみたくなった」「みんなを驚かせたい」「みんなを楽しませたい、自分も楽しみたい、カラオケも同じだが歌うことは気持ちが良い」「みんなとシャンソンを通じてつながりたい」と以前とは全く違う表情で話してくれた。

事例2(まんまと功を奏した妻の作戦)

Bさんは70歳、ある会社の役員をしていて3年前に退職した。その間ずっと家におり、いわゆる引きこもりである。このままではまずいとかねてから心配していたBさんの奥さんは町内会の役員をしており、次回の役員会に何とかBさんに出てもらう方法はないかと考えた。当日、奥さんは身体の具合が悪いからBさんに出てくれるよう頼んだ。奥さんは会計の役員をしているので、どうしても出席する必要があるからと説得した。いやいやながらBさんは初めて町内会の役員会に出席した。役員会では夏祭りの計画を話し合っていた。ただ黙って聞いていた。役員会に出席したいきさつ上Bさんは夏祭りに参加せざるを得なくなった。まず思ったのは暑い中での準備が大変で年寄りにはこたえた。ますます参加する意欲はなくなった。夏祭り当日は焼きそばの係になった。暑いので作る役は人に任せ、自分はできた焼きそばを売る役をしていた。すると、年寄りの夫婦が「毎年これを楽しみにしているのですよ。暑いのにみんなのためにご苦労様」と言葉をかける。今度は子供が町内会に配った金券を握りしめ「おじいちゃんありがとう」と買っていく。あっという間に用意した30個が売り切れた。家に帰ってBさんは「疲れた、でも楽しかった」と言ったそうである。奥さんはしてやったりである。ほくそ笑んだことは言うまでもない。この経験でBさんは何かを感じ取ったのであろう。これをきっかけに現役時代の仕入れのノウハウを生かし、焼きそばやフランクフルトなど今までスーパーで買っていたものを生協と一括購入の交渉をして町内会費を節約し、その分を子供が喜ぶようなイベントの費用に回したとのこと。その町内の夏祭りは地域の評判をよび今では遠くからも足を運んでくる人が増えたそうだ。自分のしたことが喜ばれ役割を得たBさんはいま持ち回りで、なり手のいない町内会長をしている。

歳を重ねていくと新たなことを自分から進んでやろうとは思わなくなっていく。不安だし、面倒くさい!「仕方なく応じた上司の誘い」「いやいやながら参加した町内会」案外そういうところに生きがいは潜んでいるのでは!

本人は新たな役割を得、生きがいを見つけて喜んでいることだろう。しかし一番喜んでいるのは奥さんである。

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